記事中の価格は、アメリカの酒屋で720mlの瓶を買う場合の執筆時点の相場です。変わりやすいので目安にしてください。
冷やしておいしい日本酒とは
ポイントは香り、軽さ、きれいな酸の三つです。吟醸のように香りの高いお酒は、冷やすと果実のような香りが引き立ちます。軽い口当たりのお酒は重たくならず、最後まですっきり飲めます。酸がきれいなら、後口もキレよく締まります。
冷やすと、甘みも引き締まります。常温ではやわらかく丸く感じるお酒も、冷やすとすっきり辛口寄りに感じやすくなります。日本酒に慣れていない人でも入りやすいのは、このためです。にごりやスパークリングのような甘めのお酒は、冷やすことでみずみずしさが保たれます。
どのくらい冷やす?温度の呼び名
日本酒には、冷やし具合ごとに呼び名があります。宝酒造や沢の鶴が紹介している呼び名と温度の目安は次のとおりです。
- 雪冷え:約5℃
- 花冷え:約10℃
- 涼冷え:約15℃
- 冷や:約20℃
ここで気を付けたいのが「冷や」です。もともと「冷や」は常温のお酒を指し、冷蔵庫や氷水で冷やしたお酒は「冷酒」と呼びます。お店で冷たいお酒を飲みたいときは、「冷酒で」と頼むのが確実です。
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)は、日本酒を香りと味わいで4つのタイプに分けています。吟醸や大吟醸が中心の香りの高いタイプ(薫酒)は約10から15℃、生酒などを含む軽快でなめらかなタイプ(爽酒)は約5から10℃がよいとされています。コクのあるタイプ(醇酒)は常温に近い約18から20℃、熟成タイプ(熟酒)は約15から25℃が目安です。
温度を上げたほうが持ち味の出るタイプもありますが、冷やして楽しめる日本酒の幅はかなり広いということです。このあと紹介する香りの華やかな銘柄なら、10から15℃くらいを目指すとよいでしょう。
種類別、冷やしておいしい日本酒
獺祭 純米大吟醸 454.1 (30)獺祭純米大吟醸山口約29ドル
久保田 純米大吟醸4.0 (9)朝日醸造純米大吟醸新潟約30ドル
純米大吟醸 八海山4.2 (13)八海醸造純米大吟醸新潟約30ドル
Dassai Blue 50 純米大吟醸4.1 (7)Asahi Shuzo純米大吟醸ニューヨーク約22ドル
白鶴 翔雲 純米大吟醸3.7 (7)白鶴酒造純米大吟醸兵庫約23ドル
白鶴 スペリアー3.4 (11)白鶴酒造純米吟醸兵庫約15ドル
TY KU Sake Junmai Ginjo Black4.5 (1)UMENOYADO純米吟醸約17ドル
李白 純米吟醸 WANDERING POET4.1 (13)李白酒造純米吟醸島根約16ドル
久保田 千寿3.8 (1)朝日酒造吟醸新潟約25ドル
酔鯨 特別純米酒4.4 (9)酔鯨酒造特別純米高知約20ドル
白鶴 さゆり にごり3.6 (7)白鶴酒造にごり兵庫約18ドル
Momokawa Pearl Nigori4.5 (2)Sake Oneにごりオレゴン約13ドル
松竹梅白壁蔵 澪3.5 (6)Takaraスパークリング兵庫約20ドル香りの華やかな吟醸・大吟醸。まずは獺祭 純米大吟醸 45。山口の純米大吟醸で、山田錦を45%まで磨いています。蔵元の説明は、果実のような香りと米由来の繊細な甘み。おすすめの温度は10から12℃です。価格は約29ドル。
新潟の久保田 純米大吟醸は、五百万石を50%まで磨いた一本です。アルコール15%、日本酒度0。蔵元によると、洋梨やメロンを思わせる上品な香りで、甘みと酸味の調和がとれた味わいです。理想の温度は10から15℃とされています。約30ドル。
同じ新潟からは、純米大吟醸 八海山。精米歩合45%で、雪どけの湧き水で仕込んでいます。アルコール15.5%、日本酒度+4。蔵元は、透明感のある綺麗な味わいと、上品でやさしい甘みと紹介しています。価格は約30ドルです。
Dassai Blue 50 純米大吟醸は、獺祭の蔵元が2023年にニューヨーク州ハイドパークで開いた酒蔵のお酒です。米のきれいな甘みと果実のような香り、キレのある後口が特徴で、蔵元はよく冷やして飲むことをすすめています。約22ドルと、獺祭 純米大吟醸 45より手頃です。
兵庫の白鶴 翔雲 純米大吟醸は、精米歩合50%。蔵元の説明では、みずみずしいりんご、熟したネクタリン、やわらかな洋梨のような香りです。冷やすと(約4から13℃)キレのあるすっきりした後口に、常温では旨味がふくらむとのこと。約23ドルです。
手頃に試せる定番。白鶴 スペリアーは約15ドルの純米吟醸で、OneSipが集計しているアメリカの酒屋のなかで、置いている店がいちばん多い純米吟醸です。いちごやメロンのような香りに穏やかな甘み。冷やす(約4から13℃)と果実のような香りが引き立つと、蔵元は説明しています。
TY KU Sake Junmai Ginjo Blackは、アメリカのスーパーでもよく見かける純米吟醸で、約17ドル。ブランドの説明では、ふくよかな口当たりにほのかな甘み、桃やバニラのような香り。上質な日本酒は白ワインのように冷やして飲むのがよい、というのがブランドのすすめです。
島根の李白 純米吟醸 WANDERING POETは、山田錦を55%まで磨いた純米吟醸で、約16ドル。OneSipでも評価の高い純米吟醸のひとつです。蔵元は「程よいコクがありまろやか、且つ爽やかでキレの良い」味わいと紹介していて、10から15℃に冷やすか、ロックで飲むのもすすめています。
すっきりした辛口。久保田 千寿は、食事と一緒に楽しむことを考えた吟醸で、日本酒度+5。蔵元によると、綺麗ですっきりとした淡麗な味わいに、穏やかな香り。冷やすなら10から15℃が理想とされています。約25ドル。
高知の酔鯨 特別純米酒は日本酒度+7で、OneSipでいちばん評価の高い特別純米です。米の旨みとキレのいい後口、酔鯨らしい酸味があり、食中酒として造られています。蔵元がとくにすすめる温度は5から10℃と10から15℃。約20ドルです。
にごり。白鶴 さゆり にごりは、アルコール12.5%の純米にごり酒で、アメリカでよく見かけるにごりのひとつです。約18ドル。クリーミーでほんのり甘く、白ぶどうや桜を思わせる香り。蔵元のおすすめは、軽く冷やした約5から10℃です。
Momokawa Pearl Nigoriは、オレゴン州フォレストグローブのSakeOneが、カリフォルニア産のカルローズ米で造るにごりです。バナナやパイナップル、ココナッツを思わせる濃厚でクリーミーな味わいで、瓶を振ってから冷やして飲むのがおすすめとのこと。約13ドルです。
スパークリング。松竹梅白壁蔵 澪は、宝酒造が兵庫・灘の白壁蔵で造り、Takara Sake USAが輸入しているスパークリング清酒です。アルコールは5%と低めで、桃のような香りの甘くフルーティーな味わい。メーカーは0から5℃に冷やすことをすすめています。約20ドルで、最初の一本にもぴったりです。
初心者はどれから選ぶ?
日本酒を買うのがはじめてなら、フルーティーでやさしい味わいのものから始めるのがおすすめです。純米吟醸、にごり、スパークリングのどれかを選んでみてください。どれも冷やすと飲みやすく、違いも飲めばすぐにわかります。好みの方向が見えてきたら、辛口へ、あるいはもっと香りの華やかなものへと広げていきましょう。
この中から3本選ぶなら
- いちばん手軽な一本:Momokawa Pearl Nigori、約13ドル。クリーミーでフルーティー、冷やして飲むためのにごりです。
- 少し奮発するなら:久保田 純米大吟醸、約30ドル。洋梨やメロンの香りでバランスがよく、10から15℃がいちばんです。
- 甘めが好きなら:松竹梅白壁蔵 澪、約20ドル。桃のような香りの、甘くフルーティーなスパークリングです。
誰にでも好まれる最初の一本を選ぶなら、約15ドルの白鶴 スペリアーが見つけやすく、飲みやすくて安心です。
冷酒のおいしい飲み方と保存
香りの高いお酒は、ワイングラスで飲むと香りがよく立ちます。SSIも香りの高いタイプにはワイングラスをすすめていて、日本では2011年から「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」も開かれています。
ここで紹介した銘柄なら、氷は基本的にいりません。ただ、アルコール度数の高い原酒については、オンザロックをすすめる蔵元もあります。
瓶は立てて、直射日光や蛍光灯の光が当たらない涼しい場所に置きましょう。日本酒造組合中央会によると、理想の保存温度は約1から8℃です。吟醸酒は冷やして保存するのが向いています。火入れをしていない生酒は、鮮度を楽しむお酒なので、必ず冷蔵庫で保存してください。
開けたあとは冷蔵庫に入れ、早めに飲み切りましょう。月桂冠によると、涼しく保存すれば数週間から数か月は飲めるものの、できるだけ早く飲むのがおすすめとのことです。
瓶のまま冷凍庫に入れると、割れるおそれがあります。久保田の蔵元、朝日酒造も注意を呼びかけています。



